Brian Eno/ブライアン・イーノ
Here Come the Warm Jets/
ヒア・カム・ザ・ウォーム・ジェッツ
Virgin EG, 1974 (EGCD11)

思うに私はブライアン・イーノから影響を受けたと思うが、イーノの物は余り持っていない。金銭的理由だ。20年前にレコード店でイーノ部門を見ながら「アナザー・グリーン・ワールド」や「ミュージック・フォー・エアポート」やアンビエントミュージック(環境音楽)と名がつく全てを欲しかったものだ。けれどもそれらは皆新品で−−今もそうだけど−−私のレコード予算は中古に手が届く程しかない。これは彼のレコードから抜けだしたくない人々のイーノの重要性へのテスタメントである。彼にとって良し悪しである。今迄に「テイキング・タイガー・マウンテン(By Strategy)」(Editions EG,1974)は新品で購入した。いつどこで買ったか正確には思い出せないが'サード・アンクル'−−その時点で知っていた唯一の曲−−のオリジナル録音が入っていたので選んだ。そして今、彼のファーストソロアルバム「ヒア・カム・ザ・ウォーム・ジェッツ」(VirginEG,1973) に中古で出会ったのである。インストゥルメンタルだけでなくボーカルも入っている。イーノの声はとてもいい。「ヒア・カム・ザ・ウォーム・ジェッツ」の中でフレキシブルである。たぶん彼自身この時点で何をしたいかつかんでいなかったのだろう。それが分かった時、彼は歌う事を止めた。次に、その声は最前面から退き1970年代後半にすっかりなりを潜めてしまった。もちろんこれはとても残念な事だ。思うにイーノはまだ歌うに値する声を持っている−−しかし彼に30年以上も同じスタイルで曲を書き続ける事を期待したり望んだりは出来ない。いつか「アナザー・グリーン・ワールド」−−イーノのヴォーカルとインストゥルメンタルモードをつないでいるとも言えるし、彼のヴォーカルとしては最後−−を手に入れたい。もちろんイーノが終わる訳ではない。買えるのだったら、彼の名前と共に面白い音楽の世界が有るのだから。

Various Artists/各種アーティスト
A Tribute to the Music and Works of Brian Eno
/ブライアン・イーノの音楽と仕事へのトリビュート
Cleopatra, 1997 (CLP 0016-2)

私達はここ福岡で開催される中古CDフェアに度々行く。イーノに捧げたアルバムも含むこの最初のプレイリスト内の数枚は8月に催されたそんなフェアでの収穫である。この中の殆どのミュージシャンは知らないが彼等は明らかにブライアンイーノの価値を知っている。これに含まれる「ヒア・カム・ザ・ウォーム・ジェッツ」のバージョンはその点で素晴らしく忠実である。イーノのオリジナルのロバート・ワイアットのパーカッションをそっくりそのまま真似したのではなく、違った状況で再生した連続リズムを効果的に使った「サード・アンクル」のバージョンもいい。曲によって強要される怒りを取り入れている。それを「テイキング・タイガー・マウンテン」オリジナルと「ザ・スカイズ・ゴーン・アウト」(Beggars Banquet,1982)内のバウハウスのカヴァー両方と比較してみた。前者は完璧だし後者はピーター・マーフィの歌、これはフェアではない。−−この新ヴァージョンがそれらと比較して劣るのは仕方がない。けれど、このCDの他の曲にも言えるが、聴く程に良くなってくる。ひとたびミュージシャンが素材の畏敬を乗り越えると彼等自身の目的にかなった良い解釈をする。もし最後にイーノを又聴こうかと思わせたら、トリビュートアルバムの存在理由からそうかけ離れていないだろう。カヴァーヴァージョンはミュージシャンの才能を知る良い方法である。もし、彼等が尊敬する物で何か面白い事をやったら、彼等自身の音楽でも多分うまくやれるだろう。いつももちろんそういう訳ではないが、たぶんこのイーノカヴァーはここに揚げたいくつかのグループにとっては彼等のベストなのかもしれない。これらは触発されて作り直したというより忠実なコピーだ。繰り返して言うがバウハウスの「サード・アンクル」もたいして作り直している訳では無かったにもかかわらず、特別なバンドを引き合わせてくれる機会を作ってくれた。たぶんこれらのトリビュートはここで集められたミュージシャンにも同じ事をするのだろう。

Peter Murphy/ピーター・マーフィ
Dust/ダスト
Metropolis Records, 2002 (MET 238)

「ダスト」はピーター・マーフィの最も完成度の高いアルバムである。しかし、それにもかかわらず、たぶん彼のソロ入門としては不適切だろう。過去の彼の曲のどこにも似たものがない。トルコの影響満載で軽さと心地よさをまとっている。その音楽は優雅で威厳が有り力強い。ヴォーカリストとしてピーター・マーフィの力量にかなうポップミュージシャンはそういないし、彼の声はここで特に良い状態だ。作詞家としては何がそうしたのか知らないが、(正確かどうか知らないが)ポップミュージックのゴスモードに関係ある全てのミュージシャンが陥り易い危険性−−カリスマである事や尊大である事、馬鹿になりきる事を避けた。マーフィがそれに関してどうするのかいつも解る訳じゃないが、彼は普通私達の気をひく価値有りと確信している。「ダスト」は感情と共に働き、夢からのイメージと違うレベルや信仰みたいな物の物語と観察を暗示する。アルバムは、変わった組み合わせだがモントリオールとイスタンブールで録音され、結果的にトルコのミュージシャンとカナディアンスタジオミュージシャン数人とで作られている。ピーター・マーフィのアルバムで多くの役割を持つヒュー・マーシュ−−トロントのフォークロックシンガーソングライター、ブルース・コーバーンのバイオリン奏者であると思うが−−について相反した気持ちがある。「ダスト」ではちょっとばかり多すぎる電子バイオリンだが、それでプロジェクトがダメになる訳じゃない。マーシュはトルコミュージシャンと折り合って良い仕事をしているしプロデューサーMercan Dadeはトロントのミックスでマーフィスタイルを適確に保っている。マーフィは彼自身の「ラブ・ヒストリア」(Beggars Banquet,1988)と「カスケイド」(Beggars Banquet,1995)からの2曲もカバーしている。それらは如何にマーフィと彼の曲が臨機応変かを見せている。それらは又愛と家族そして存在の難しさ−−壮大な哲学的存在であり存在場所に適しているかどうか−−にも関係している。ピーター・マーフィは理解に努め、トルコ生活での安定を見いだしている。「ダスト」はそのテーマを引き出すと共に音楽的にも素晴らしい。

Robyn Hitchcock and the Egyptians/
ロビン・ヒッチコック&エジプシャンズ
Globe of Frogs/グローブ・オブ・フロッグス
A&M Records, 1988 (CD 5182 DX 2746)

1989年にロビン・ヒッチコックの公演に行ったが惜しい事に楽しかった事と彼が恐ろしい程の才能を持ち且つ不思議に魅力的だった事しか覚えていない。ヒッチコック&エジプシャンズを一緒に見たとは思わないがこのバンドは彼の音楽への取っ掛かりだった。「フェグメニア」(Midnight Music, 1980)からヒッチコックの変なポップミュージックへの初期コントリビューションであるソフトボーイズの「アンダーウォーター・ムーンライト」(Armageddon,1980)に跳び付いた。これは私達が初期のピンクフロイド、後ではビートルズ、それに他の誰かがリッケンバッカーギターでやった事とルイス・キャロルとエディス・シットウェルっぽい雰囲気の詞のサイケデリックポップとそう懸け離れていないと思うが。ロビン・ヒッチコックは彼の才能全部ではないにしろこのトラディションに合わせた訳だ。まあ、彼はサイケデリックなブリティッシュフォーク、ボブディランと独自の音楽を作りあげた誰かから素材を取り入れたと言った方がいいだろう。それも良質の音楽でである。ヒッチコックの到達と影響力は枠にとらわれない一つの才能にまで拡がった。幸運な事に彼の音楽を尊敬し好きなアーティストは多いにもかかわらず彼の様になろうとした人を見つけた事がない。「グローブ・オブ・フロッグス」は80年代後半のヒッチコックブームの最高潮近くに出されたが、その当時は、すまないけれど、これは見送らせてもらった。思うに、彼を聴き過ぎた。それに(見た所)突然の人気沸騰に(馬鹿らしくて)いらついた。−−長年自分だけが好きだった人を皆が誉めるのを聞くに忍びなかった。だから、ソフトボーイズに戻り人気上昇のヒッチコックを離れた。楽しめる音楽の機会を放棄したのだから馬鹿だったと思う。彼の他の才能はと言うと、ヒッチコックは優れたギター奏者でもあり、音域の使い方も知っている。「グローブ・オブ・フロッグス」は素晴らしいし、今では15年前に買うべきだったと思っている。ヒッチコックは面白そうな物を作り続けているし、今度彼の最近のリリースを買う時は15年も待つつもりはない。

Pet Shop Boys/ペットショップボーイズ
Bilingual/バイリンガル
Parlophone, 1996 (7243 8 53102 2 5)

今回のレヴューは5つのとても弱い関連でブライアン・イーノからペットショップボーイズへ移ります。皆が皆彼等を嬉々として紹介しないのだろうけど、私はやってしまおう。今月のプレイリスト内で疑いなく一番のポップグループだし、このアルバムは正に良質のヒットシングルを生んだしここでそれを言う必要は無いのかもしれない。私としてはあなたが見落とすかもしれない事やまだ出くわしてない事に着目しているつもりだ。あなたにはたぶんペットショップボーイズが同じ事をやっているとしか思えないかもしれない。それでは尋ねるが、今月のリストで他のアルバムを彼等の様に夜遅く聴く音楽として考えられるだろうか?ペットショップボーイズはぱっと見(聴)よりパワフルで内容がある。「バイリンガル」はしっかりと作られている。物語性があるし、内容はいつも甘い訳じゃない。曲と詞のフレーズがひとつの状況を現し、次へと巧くつなげる事で曲同士に関連性と相互性を持たしている。主張する時と感傷的な時があり、そして綺麗な部分もかなりある。これは夜聴くのに−−例えば台所を片付ける時とか柔軟体操するのにもってこいだ。今はやっていないが後者は9月に数回試みた。けれども、「バイリンガル」はまだステレオの横に置いてあるし、繰り返し聴いた後でも聴くに値する。このCDは明るい照明と辟易させられる挨拶と良いポイントカードシステム、それと人によって違うアルファベット順をする日本で有名な中古チェーンで購入した。もしそのアイテムが数カ月売れ残った場合その価格は自然と下がる。このCDはもちろん「バイリンガル」のBセクションにあった。ミュージシャンは私から一銭の売上も無い訳で、こんな時は特に殆どのレコードを中古店から買った事をすまなく思う。ペットショップボーイズ部門の「バイリンガル」価格はこのCDの3倍程なのだから、こんな場合中古店さえだましている気がする。願わくばこのレビューが取り上げたミュージシャンに興味を持つきっかけとなり、その興味が最終的にレコード売上に結びつけばと思う。ペットショップボーイズには私の助けは必要ないし、ブライアン・イーノもおそらく大丈夫みたいだがピーター・マーフィとロビン・ヒッチコックについてはよく分らない。彼等のレコードを買ってくださいね。私みたいに、じゃなくて新品を買ってください。

-CR, 2004年11月

(注:上には書いていませんが、ピーター・マーフィの「ダスト」は新品購入しました!)

Date posted: 2004-01-22